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愛の挨拶(あいさつ)( Salut d’amour )は、エルガーのラヴ・ソングです。その背景は駆け落ち同然で小さな町の教会で結婚した時に、婚約の贈り物として書いた名曲でした。
イギリスの小さい町の小さい教会で結婚式というと、小さな恋のメロディをイメージしてしまいます。面白いものです。

ワーグナーのジークフリート牧歌、シューマンのピアノ協奏曲。大作曲家がまだまだの頃に愛する妻に贈った曲は、今の私達にとってもとても愛おしく、幸福にしてくれている。

エルガー・ルート

エルガーは『威風堂々(いふうどうどう)』で大成功してイギリス、コンテンポラリー音楽の大作曲家になった。今、英国に旅をすると、エルガーの銅像や、『愛の挨拶』にちなんだ思い出の街並みが楽しめるエルガー・ルートがある。

エルガーの『愛の挨拶』は、自筆譜の頭に Calice(キャリス) と記されている。エルガーは29歳の時音楽教師として務めていた、そこにやってきたのが8歳年上のアリスだった。Calice というのは、キャロライン・アリス ( Caroline Alice ) のことだ。恋し合った2人だったが、2人には身分の違いがあった。
キャロライン・アリスは貴族階級。彼女の父親は軍人だった。一方、エドワード・エルガーは中産階級の職人の小倅(こせがれ)。宗教の違いも問題と成り、キャロライン・アリスの家族、友人たちから強く反対されたのを2人は愛の力で乗り越える。

アリスは夫の楽譜を清書すると、いろいろな出版社にそれを送った。内助の功の甲斐もなく、生活に窮したエルガーは『愛の挨拶』をショット社にわずかの金額で売り渡してしまった。

愛のあいさつ

後になっての話である。
エルガーが散歩をしていると、聞き覚えのあるメロディーが聞こえてきた。彼の『愛の挨拶』を大道芸のフィドル弾きが練習していたのだった。
彼は大道芸人に問いかける。
「その曲は誰のなんて言う曲なのかい?」
「エルガーの愛のあいさつです。」
エルガーは銀貨を大道芸人の足元においた。
「そんな大金、いただけません。」
銀貨は当時のチップとしては何十倍も高額すぎた。
エルガーは言った。
「その曲を作曲した男は、このチップよりも少ない金額で曲の権利を売ってしまったそうだ。
愛する人に贈った曲だったというのにだよ
彼はそれを、今では随分後悔しているようだよ。」

やがてエルガーは『威風堂々』で大成功するが、そうなればなったで、エルガーはアリスの身分と財産を狙って結婚したという噂が流れる。
他の人が入っていけない深い絆が、2人にはあった。
天才の愛の調べは美しい愛の物語とともに語り継がれる。素敵な名曲です。