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映画『アマデウス』の音楽。ネヴィル・マリナーの2つの演奏。

あ、モーツァルトが英語でしゃべっている。・・・それは当たり前だと言われることは至極当然。イギリスの劇作家ピーター・シェーファーの戯曲を映像化されたのが、ミロス・フォアマン監督の米映画『アマデウス』なのですからね。

批評家とコメンテーターは、アナウンサーとキャスターの定義が当てはまるようだ。いづれもその目的は同じところだったとしても、そこへ向けた視点は異なる。
映画『アマデウス』の音楽。サー・ネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズが担当をした。映画で登場するモーツァルトの名曲は、繰り返し演奏、録音をしているからお手のものだ。近頃は既成のヒット曲をふんだんに取り入れて映画のサウンドトラックとすることが当たり前だから、当然『アマデウス』も、録音済みのもの、レコードやCDで発売された演奏を使っているのだろう。そうでなくても使い慣れた楽譜で演奏されたものだ。そう思うと事情が違ってくる。
映画『アマデウス』の音楽も、モーツァルトのレコードも楽しみそこねてしまいますよ。

モーツァルトをめぐる音楽史上最大のミステリー

音楽家の生涯を描いた映画では最高峰に評価されるだろう。真実のモーツァルトは映画のとおりではないけれども、最新の研究に即しているところとイマジネーションが上手いことミックスされています。
刺激的なほどデフォルメされたところ、あの下品な笑い方など、医学的にも裏付けのあるところ。映画ではロマンティックな死の描写となっていますが、脳障害があったことは解明されている。
さすがに映画に『おしりをなめろ』とか『うんちくん』の歌が登場しなかったのは残念。

映画の中で「フィガロの結婚」をイタリア語にするか、ドイツ語にするかというシーンで、モーツァルトが何語でもいいですよ、と答えるのがモーツァルトの音楽の特徴をよく言い得ているでしょう。
モーツァルトにとっての音楽は、彼の自己表現であり宗教曲だからとか、遊び歌だからという仕切りはなかった。よく取り上げられるのが、フィガロの結婚の伯爵夫人のアリアと、ミサ曲が同じ曲で歌詞が異なるだけ、だということに現れている。

Amadeus

批評家とコメンテーター、2つの視点の演奏。

批評家とコメンテーター。アナウンサーとキャスター。視点をどこにおいて伝えるかということなんですね。
アナウンサーは原稿に書かれている事実だけを伝えるもので、当人の考えを挟んではいけないと定義されています。個人的見解に偏ってしまわないようにというキャスターの配慮も難しいところでしょうが、大惨事のニュースを伝えた後に、微笑ましいニュースを話さなければいけない時には少し間を置くなど工夫をされているということです。

映画批評は、この監督作品は静物のアップから始めるとか、日常の風景をシーンのつなぎに使うなど、オタク的視点が必要。コメンテーターの言葉の魅力は、その当人の日常さえ感じられます。

どれもニュースや、映画の有様を伝える手段です。映画『アマデウス』では、ネヴィル・マリナーはフィクションをより楽しみやすく、わかりやすくする演奏に務めています。
モーツァルトが英語でしゃべっている様に、許容範囲のアレンジがされている演奏です。

映画ロードショー時に出たCDには、映画で使われた演奏とは違う音源もありました。ネヴィル・マリナーはモーツァルト全集をフィリップスに録音していますが、それとも録音は異なります。
映画『アマデウス』のドラマにふさわしい演奏をここでしていると言えます。曲によっては部分だけで全曲でないのは残念でしょうけど、サウンドトラックとしての演奏であることを失念してはならないと思います。
マリナーのモーツァルトとしては、このサウンドトラックではなくフィリップスに録音している方を重視してください。

かつてCD1枚だったサントラ盤は、ディレクターズ・カット版が公開されたのに合わせて3枚組Boxでの購入がおすすめ。 後であの曲がなかったということはないだろうから、3枚組でモーツァルトのアウトラインは聴けるでしょう。ただ、再三聞き返すものにはならないと思います。あくまでサントラ盤なので、映像がないとぐっとくるものは半減します。
わたしは二、三回で聞かなくなりました。ブルーレイDVDのほうがむしろ楽しめると思います。
曲の演奏として聽くなら、マリナーがフィリップスに録音したCDから揃えていくのが良いでしょう。

映画で登場した曲を、マリナー指揮アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズのセッションCDで聴き比べてみるのはクラシック音楽の楽しみを広げることに良いでしょう。クラシック音楽は作曲家が楽譜に書いたことを、私達が楽しめるように演奏する再現芸術です。指揮者の仕事は、コンサートで交響曲や協奏曲を演奏する時とオペラの時は気持ちのあり方が違うもので、それに加えて映像作品の音楽という、同じ指揮者のそれぞれを聽くこともクラシック音楽の楽しみですね。

Amadeus: The Complete Original Soundtrack Recording From Fantasy